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心易き人にも売買進め間敷事

2016/06/05 19:37:55

テーマ:現代訳 宗久翁秘録

 

本日は、現代訳宗久翁秘録 第139節「心易き人にも売買進め間敷事」をご紹介致します。

 

1.原文

目次

何程心易き人にも、売買を進め申間敷きなり。若し了簡違ふ時は、恨みを得るなり。総て相場高下の論致まじきなり。此道を心掛る人は、我了簡を立てず、人の了簡にて商する人はなき筈なり。少々にても図に当るときは、募り了簡を立てたがる者なり。是第一可慎処なり。勿論、慥かなる高下を見定め、打明け人に語り進むる時は、人も其気になる故、二三俵方も利を得る人は、一俵方ならで利運ならざる者なり。確かなる処を見据候はば、人々に拘はらずして、売買可致候。尤、世の中に随ひ、諸国作合、豊作凶作、上方相場、九州様子聞合せ随分宜しきなり。存念は決して人に語るべからず、是大極意なり。常々専ら慎むべし。

 

 

 2.現代訳

どれほど自分と心やすい仲のひとであっても、相場の助言をしてはならない。見通しを誤った場合は恨みを買うものである。総じて、相場の高下について議論するのも無意味な事である。相場に携わる人で、自分の見通しを持たずに、他人の見方で相場をする者は居ないはずである。

少しでも相場が図に当った時は、乗気になって他人に、自分の見方を吹聴したりしたがるものだが、これは先ず第一に慎むべきことである。勿論、確とした見方を持って、他人にもこれを語り、相場をやって行く時は、他人も同調するが、相場とは味方が少なければ少ないほど良く、この場合でも、自分一人でやれば二、三俵は利が得られる筈のところが、一俵程も利を上げられないでしまうものである。

確とした見方があれば、他の人の議論にかかわらず、相場を一人で行うのが良い。もっとも、稲作の出来栄えや、諸国の作柄、豊作であるか凶作であるか、上方相場の動き、九州方面の様子を人々に問い合わせる事は非常に良い事である。しかし、自分の考えは決して他人には語ってはならない。これは相場の大極意である。常日頃から、厳に慎むがよい。

 

 

3.私の解釈

 

 

 

 

この節では。情報を集める為に、人々とコミニュケーションを取る事は良いが、相場の見立てを他人に語ることは、①外れると恨みを買ってしまう事、②本来取れる筈の利益が半分以下になってしまう事、以上の観点から見立てを語るべからず、是が極意であると説かれています。

 

宗久翁秘録では、「人々西に走らば、我は東に向かう時、極めて利運なり。人の戻る頃、遅れ馳に西に向かふては、何時も利を得る事無し。」に代表される様に、大勢とは逆の少数派に付くべきとの内容が、度々書かれています。人気が偏る時、その逆が必ず訪れるもので、是は理屈では無く、自然の道理であると説かれています。

 

「相場師とは孤独なもの」、是は、私が尊敬する実在の相場師、三四郎先生のお言葉ですが、この節にて説かれている内容を凝縮したものであると考えます。

他人に流される事無く、チャートと真摯に向かい分析し、行き過ぎを見極め、初期少数派の内に、トレンドの方向に建玉する、これが相場の極意であると考えます。