本日は、現代訳宗久翁秘録 第123節「買米有之相場引上の節心得の事」をご紹介致します。
1.原文
目次
買米有之強気の処、相場引上る時は、上留りの考えも無く猶猶買募り、至りて高値の処買の重ね、不利運になることあり、是慎むべきなり。是を取り留るには、千両の買を先づ五百両分売返すべし、米の強弱を見るべし。天井行付知れざる故、残らず売り返すも宜しからず、売付にて利分取留るも、同じ心持なり。引下る時は、何程下るも知れぬ様になるものなり。上の時に同じ、能々考ふべし。
2.現代訳
買米が有って強気でいるおり、相場が上がってくると、いずれ天井打って上げ止まるものだ、と言う分別を忘れてますます買い重ね、後から考えると相当の高値の米を大量に買い増したため、結局失敗する事が有る。これは慎むが良い。こうした失敗をしない為には相場の一段上げの段階で、千両の買米の内五百両分は一旦利食い、相場の強弱を考えるが良い。しかし、この段階ではどこで天井を打つか目処がつかないから、全て利食って手仕舞ってしまうのは良くない。売りの場合も同様に、下げてくるとどこまで下がるかわからない、と言う気になるのものだが、上げで買いましたくなったりする際と同じで、自分の気分に引きづられぬ様に、よくよく考えるが良い。
3.私の解釈
この節では、建玉が含み益となった際の心持、及び利食い手法について説かれています。
売り建て、買い建てに拘らず、建玉が含み益になった場合、追撃玉を建てるか、何処まで利を伸ばすか、どこで手仕舞うか迷う所ですが、一番やってはいけない事は、含み益が含み損に変わってしまう事です。
これは、後悔に二ツある事にも説かれていますが、笑って済ます事が出来る後悔と、後々まで引きずり、その後の相場に悪影響が出てしまう後悔があり、手仕舞いを間違えると、後者の後悔となってしまう事があるので、これは避けなければなりません。
その手法としては、建玉当初から、退出のポイントを予め決めて置く事が第一ですが、その退出ポイントが来た時に、全てを利食いしてしまうと上述の前者の後悔となってしまう事が有るので、先ずは建玉の半分を利確し、残り半分は相場の強弱を見極め、手仕舞いすべきと言う意味であると思います。
当たり前と言えばそれまでですが、慾に引っ張られ、手仕舞いが遅れる事は良くある話であり、2段階に分けた合理的な手仕舞いにより、手堅い利食いと、利を伸ばす利食いの両方を得る、是非共実行すべきであると思います。