本日は、現代訳宗久翁秘録 第95節「天井を直段三年続き夫れより変ずる事」をご紹介致します。
1.原文
目次
天井直段、底直段三ケ年続き、それより変ずるものなり、疑ふことなし。
但 し、此事、明和五年に徴し見るに、相違なし。第一、三年塞りの時、七月甲になる年、別して三年続くなり。其外の年も、極不作年には三年続くなり、見計らふべし。尤も位付けの書にて考ふべし。但し、初年百廿俵上る時は、二年目は百俵上げと心得ふべし。翌春より夏中迄下候節も、右の順にて、二年目三年目は下げ不足なり。且、其年の買ハラミの多少に因るべし。考ふべし。
2.現代訳
大相場的に言って、天井値段、底値段は三年つづき、その後、転機を迎えるものである。(高回り三年、安回り三年と同意。)間違いない。
この事実は明和五年の場合に照らしてみて、ぴったりと当てはまる。まず、三年塞がりの時や七月が申に当る年の場合はとくに、天底三年周期がはっきり出る。そのほかの年でも、非常に不作の場合高い相場がそこから三年続く。見計らうがよい。かつ、三位の位付けの書に照らして考えるが良い。
但し、高回り三年の初年百二十俵上る時は、二年目は百俵上げのものと心得るが良い。翌春より夏中まで下げた場合も同様であって高回り二年目、三年目は未だ未だ下げ不足の状態である。それとともに、その年の買い方の買膨れの状態によっても相場は動く。こうした点を考えるが良い。
3.私の解釈
この節では、中長期の波動の周期性について説かれています。
当時の米相場は、天候により作柄が左右され、その作柄の出来不出来により相場が高下するものですが、明和五年からの記録では不作年の周期は3年続く事が確認されています。
また、見逃せない点として、その3年周期の中でも1年単位で見ると、段々と高値の切り下げ、安値の切り下げが見られるとの記述があり、これは言い換えれば1年以上の波動で見ると、トレンドが継続していると捉える事が出来ます。
では、現代の相場に当てはめるとどうなのか。
これは見るべきチャートを、日足から月足へ変更してみれば判り易いと思います。過去十年のNK月足を見ると、その高安の周期は28~30カ月であり、およそ3年と見る事が出来ます。その時々の風により、多少の前後は有りますが、おおよそ江戸時代の米相場と似通っており、人の心に左右されるのが相場である事が判ります。
チャートはその時々の相場に携わる人々の心の軌跡である。チャートに真摯に取り組む事で、相場の波を泳いで行きたいと思います。