本日は、現代訳宗久翁秘録 第150節「急に高下の節心得の事」をご紹介致します。
1.原文
目次
米急に引上る節、思入れに売付くべしと、売気に赴くべし。又急に引下る節、買入可申と買気になるべし。但し上げ留め下げ留め知れざる故、売り放れも少し危し。併し此処売るべし買ふべしの心持なき時は、上詰めの処にて買ふ者なり。又下詰めの処にて売る者なり。右心持必ず伝なり。
2.現代訳
相場が急騰している時は、何処で売ろうかと考え、売りに付くが良い。また、相場が急落した時は何処で買おうか、買場を求めるが良い。但し、大勢的な天井、底の見込みを持たずに、こうした事をやると、失敗する事がある。
しかし、こう言った人気の逆を突く発送、決断が無いと、天井で買う事になったり底を売ったりする事になるものである。この人気の逆を突く決断こそ秘伝の要である。
3.私の解釈
この節では、人気の逆を突く心持の重要性ついて説かれています。
宗久翁秘録では、度々、「人の戻る頃、遅れ馳に西に向ふては、何時も利を得ることなし。」「人気下ると片寄る時は、却て上る者故、考に及ばざるなり。」に代表される様に、人気極まる時、その逆を突く心持こそが秘伝であると説かれています。謂わば逆張りの手法ですが、私は、これには前提条件が必要であるものと考えています。
その前提条件とは、自分が乗ろうとしている波と、その一回り大きい波を(デイトレならばスイングの波、スイングトレードならば短期の波と言う様に)よく観察し、一回り大きい波のトレンドを把握する必要があると言う事です。
そして、相場がその波と反対方向に押した時、そのトレンドの方向に売買すると言う事こそが、宗久翁の説く、「急に引上る節売気に赴くべし。又急に引下る節買気になるべし」と言う事であると考えます。
此れを実行するには、日々のチャートを分析し、相場の水準、人気の張詰め、風を把握する事が大切で、相場の行き過ぎを確率で把握する事で、実現出来るものと考えています。
4.原典紹介
現代訳宗久翁秘録は、全157節の原典と現代訳、そして宗久翁小伝にて構成されています。当ブログにて紹介しているのは、その内の46節に過ぎません。
ご紹介している46節は、私の主観から、重みがあると考えたものを抜粋したものですが、その他にも見るべき節がある事も事実です。
また、宗久翁小伝には、戦前迄の「日本一の大地主、庄内の本間家」の礎を築いた宗久翁の生い立ち、そして、宗久翁が、稀代の天才米相場師、「出羽の天狗」との異名をとるに至るまでの過程が書かれており、それだけでも一読に値するものと思います。
現代訳宗久翁秘録は絶版であり、新書の入手は困難を極めますが、残り少ない中古書がこちらから購入出来ます。原典をお読みになれば、また違った景色が見えて来るものと思いますので、是非、一読される事をお勧め致します。
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