目次
本日は、現代訳宗久翁秘録 第87節「買八分の利、売二分の利と申事」をご紹介致します。
1.原文
買八分の利、売二分の利。
但し売方は利足を取り、其上利米ある時は、甚だ勝手なる者なれども、万一上方当地作難有る時は、大阪上げ来る故、買返しならず、損出なり。買方は、数月の利払い、上げの程知れず、甚だ買悪き者なれども、利運に向く時は、利米は風前の塵にて苦にならず、且多少に限らず、秋米は上らずと云うことなし、売方すべからず。
2.現代訳
買い方には八分の利があり、売り方には二分の利がある。
売り方には利息が入り、その上で相場が図に当って利益が出ればはなはだ都合が良いが、万一、上方、或は当地で作柄に支障が起れば、大阪相場から上げて来るので買いに転ずるわけにもゆかず、損が出る。買い方は、数か月利息を払い、必ず上ると言う保証もなく、はなはだ買いにくいものではあるが、一度利運に乗れば、利の乗った米は風前の塵にも以て、少しも苦にならない。また多少に限らず秋米は上らないということがない。であるから、売りについてはいけない。
3.私の解釈
この節では、利運に向く時の売り方と買い方の違いについて説かれています。
当時は米相場では、売り方が買い方から利息を貰うものでしたので、買い方よりも売り方の方が敷居が低く、入り易いものでしたが、買い方が利運に向いた際には風前の塵の様に舞い上がるもので、利息は取るに足らないものとなると言う内容です。
現代の相場では、発行済み株式数が有限である個別株が是に該当し、買方八分の利に相当すると思います。そしてそれには、天井三日底百日と有る様に、底を確認する事が第一条件であると考えます。同時に、売り方に利が有るのは天井を付けた時の短期間で、安易な売りは控えるべきであると説かれています。
また、この節にはありませんが、下げ相場は上げ相場とは値動きが異なるので、早々に手仕舞いする事が良いと、何節にも渡って説かれています。その技法が、「二つ仕舞、三つ十分、四つ転じの事」であり、また買い踏み出しの見極めは、「三位の節に到って上ぐべきの節を知る術の事」であるとされています。これらを見極めるには、やはりチャートを分析するのが最良であり、チャートと真摯に向き合う者が、最終的に勝利すると考えます。