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米商の秘伝、気を転ずる事

2015/11/03 23:39:26

テーマ:現代訳 宗久翁秘録

 

目次

本日は、現代訳宗久翁秘録 第65節「米商の秘伝、気を転ずる事」をご紹介致します。

 

1.原文

高下有之、其後持合の節、何となく弱く見え、色々考へ、諸方聞合すと雖も、強みは見へず。此間に、是非是非二三十表も引下ぐべき模様故、此処にて売らずんば遅れになるべしと、頻りに売気進み立候節、気を転じ買方に付べし、是伝なり。我至りて弱気にて、買方に付く事、甚だ危くならぬ事なれども、此書を守り、一分の存意を立てず買入るる時は、極めて利運なり。是非上ぐべしと、買気進立候節も、是亦気を転じ売るべし、米商の秘伝なり。常々此心持忘るべからず。我強気の節は、人も強気と思ふべし。弱気の節も同じ。

 

 2.現代訳

相場に高下の動きがあって、その後保ち合っている時、何となく弱く見えて、色々考え、諸方に問い合わせても上げそうにも思われない。此の間にも、二、三十俵も下げてしまいそうなので、ここで売らねば、後れてしまうと売りたい気持ちが次第に高ぶる。こうした時は気を転じて買い方に付くが良い。これは秘伝である。

 

こうした時自分としては極めて弱気で有るので、買い方に付くことはとても怖くて、出来にくい事ではあるが、この教えを守り、一分の我意も張らず買入る時は必ず利運に乗れる。

 

絶対に上ると買気が次第に高まってくる時も、これまた気を転じて売るが良い。これが米商の秘伝である。日頃この気持ちを忘れてはならない。自分が強気の時は人も強気と思うが良い。弱気の場合も同様である。

 

 

3.私の解釈

この節では、相場に臨むに際し、気を転ずる事の重要性について説かれています。人が右を向いて動き出した時、後れて付いて行ったのでは利を得る事は難しく、その動きを見極め反対方向に向かった時にこそ、利運が待って居ると言うものです。

 

自分が売りたい(買いたい)と思う時は、周りも皆同じで、その値動きの初動に乗れた時、その値動きが大きなトレンドとなる時は、トレンドフォローにて大きく利を得る事が出来るのは疑いないのですが、保ち合い相場の時はそうは行かず、高値掴み、底値売りに成ってしまいがちです。

 

とは言え、全ての相場で逆張りをする訳には行かず、相場の水準、人気、風を読み、その時々に合わせた踏み出しで臨むべきであると思います。チャートは全てを語ってくれます。チャートを分析し、勝率が高く期待できる時に、私情を捨て気を転じ踏み出す事が出来れば、宗久翁が説くような売買が可能になるものと思います。