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上げれば扨こそ、下げれば扨こそ決心の事

2015/03/08 23:53:32

テーマ:現代訳 宗久翁秘録

 

 

本日は、現代訳宗久翁秘録 第56節 「上げれば扨こそ、下げれば扨こそ決心の事」 をご紹介致します。

この節では、目先の相場の波に惑わされ、短期のトレンドを見失い、相場に翻弄される様について説かれています。

 

1.原文

目次

米上ぐべしと思へども、若し此間に、一ト下げ出る事も無心元見合候節、少々上る時は、扨こそと思ひ、下れば扨こそ下げなりと思ふ。これ一体、心不定動くなり。跡相場にて考ふる時は、あの上売、此下げ買へば、上げ下げにて取る事、心安く思はれるども、高下を取る事稀なり。一両月も跡見合せ、一度の上か下かを、取る考をなすべきなり。

上下を取心にては、年中休みなく、相場に連れ心動き騒ぐ者なり。夫故損出るなり。

 

2.現代訳

この相場は上がるものと思っても、上げまでに一下げ入るかもしれぬ不安で買いを見合わせている時、少しばかり上がると、さてこそ上げに入ると思い、また下がれば下がったで、さてこそ下げになると思う。これはまったく気持ちが定まらず、不安定なのである。相場の動きの後の足取りを後になって考えると、あの上げで売って、この下げで買えば上げ下げで取ることが容易に思われるが、高下相方で取れる事は極めて稀なのである。

一、二ヶ月の相場の足取りを考えて、一度の上げ下げかで取る様に考えるべきである。上げ下げ相方を取るつもりで相場を張ると、年中休みなく相場を張らざるを得ず、相場の動きに連れて気持ちも不安定に揺れ動くものである。その為に損が出るのである。

 

3.私の解釈

この節では、目先の相場の波に惑わされ、短期のトレンドを見失い、相場に翻弄される様について説かれています。

 

短期筋の仕掛けが入った時の様な値動きが激しい相場では、資金の逃げ足も速く、高下の動きも激しくなり、相場を追い掛けて、つい手が出てしまう事があるかと思いますが、そう言う時には決まって損失が出るものであり、これは、短期(私は、3~4ヶ月と定義しています)のトレンドを見失っている時に起こるものであると説かれています。

 

私がこの節にて注目したい所は、「一両月も跡見合せ、一度の上か下かを、取る考をなすべきなり。」 で、これは、相場軌跡(チャート)を分析し、短期のトレンドを見定め、そのトレンドの方向に売買する、と言う意味であると考えます。
 

そして忘れてはいけない事として、「上下を取心にては、年中休みなく、相場に連れ心動き騒ぐ者なり。」で、これは、「休むも相場」であると説かれているものと考えます。

 

休み(相場分析、トレンド把握)、仕掛け、退出、このサイクルを上手く回し、相場に勝って行きたいものです。 
 

以下参考

第 1節  米商は付き出し大切の事

第33節  商内仕舞四五十日休の事