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米商は付き出し大切の事

2014/06/20 22:11:00

テーマ:現代訳 宗久翁秘録

 

こんばんは、J.BOYです。


今週末より、私が参考としている文献を取り上げて行きたいと思います。週末の相場休業日を利用して、更新して行く予定です。

 

先ずは、一押しの、山口映二郎著 「現代訳宗久翁秘録」より、重要と思われる内容を抜粋してご紹介致します。

 

1.米商いは付き出し大切の事

目次

米商いは付き出し大切なり。付き出し悪しき時は決して手違ひになるなり。又商い進み急ぐべからず、急ぐ時は付き出し悪しきと同じ。売買共、今日より外、商い場なしと進み立つ時、三日待つべし。是伝なり。得と米の通いを考え、天井底の位を考え売買すべし。是三位の伝なり。底直段出ざる内は、幾月も見合わせ、図に当たる時を考え、売買すべし。商い急ぐべからずとは、天井直段底直段を見ることなり。付き出し大切とは、考えの他の事出る者なればなり。天井底を知る時、利運にして損なきの理なり、利運の米は、強気思はず、百俵上げを見切り、商仕舞、四五十日休むべし。休むと云ふは、底直段を見るの理なり。前後能々考へ、受容すべし。

 

2.現代訳

相場は、踏み出し、仕掛けが肝心である。踏み出しが悪いと、必ず失敗するものである。また、仕掛けを急いではいけない、急ぐと言う事は、踏み出しが悪い事と同一である。売りでも買いでも、今日が相場に入る時と気が急く時、3日待つべきである。これが秘伝の一である。相場の水準、人気、風を考え売買すべきで、これが三位の秘伝である。天底が判らない時は、幾月も待ち、天底が見えた時に踏み出すべきである。

仕掛けを急ぐなと言うことは、天底を見極めよと言う事で、踏み出しが肝心とは、予想外の事が現れる事があるからである。天底が図に当っている時は、利運が乗り、損が出ないものである。

相場が当たっていて、利運に載っている時は、深追いをせず、百表上げで見切りをつけて手仕舞って、その後四五十日は相場を休むが良い。ここで休むと言うは、この間にその後の相場の底値の検討を付け、次の買い備えるためである。相場の展開のアヤをよく考え、この伝を用いるがよい。
 

3.私の解釈

乱暴に一言で言うとすれば、「水準、風、人気を考え、天底を見極めて仕掛けよ」と言う事だと思います。その為には、先ずはじっくり相場を観察すべきで、相場を観察するにはチャートを分析しトレンドを掴む事が最良と考えます。
 
以前「陳腐化する手法」にても書きましたが、チャートは、売買に携わる全ての人々の(コンピュータ売買も含め)、心の軌跡であり、チャートは全てを語ってくれるものと考えます。トレンドは、相場に携わる人々の思いが一方向に偏り出し、そのシーソーバランスが崩れた状態であると思います。そして、そのトレンドの方向とは逆方向に押した時、トレンドの方向に売買する、これが宗久翁の説く、「天底を見極めよ、踏み出し大切なり」であると思います。
 
また、忘れてはいけないのが、仕掛け時の目論見通りになった時、迷わず手仕舞いをし休む事。休みの間は、ただ休むのでは無く、次の相場に向けて準備する事、これはチャートの分析が最良であると思います。

 

売買急ぐべからず、言うは易しですが、実行は難しです。
常に念頭に置き、売買して行きたいと思います。

 

4.原典紹介

現代訳宗久翁秘録は、全157節の原典と現代訳、そして宗久翁小伝にて構成されています。当ブログにて紹介しているのは、その内の46節に過ぎません。

ご紹介している46節は、私の主観から、重みがあると考えたものを抜粋したものですが、その他にも見るべき節がある事も事実です。

また、宗久翁小伝には、戦前迄の「日本一の大地主、庄内の本間家」の礎を築いた宗久翁の生い立ち、そして、宗久翁が、稀代の天才米相場師、「出羽の天狗」との異名をとるに至るまでの過程が書かれており、それだけでも一読に値するものと思います。

現代訳宗久翁秘録は絶版であり、新書の入手は困難を極めますが、残り少ない中古書がこちらから購入出来ます。原典をお読みになれば、また違った景色が見えて来るものと思いますので、是非、一読される事をお勧め致します。