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燈火消えんとして光増す心の事

2014/12/04 17:20:38

テーマ:現代訳 宗久翁秘録

 

 

本日は、現代訳宗久翁秘録 第35節 燈火消えんとして光増す心の事 をご紹介致します。
 

1.原文

霜月限天井直段近く買米有之節、何等の不時申出し、商内も不出急上になることあり。二三百両買入れある人も、金高買入れざるを後悔し、残念に思ひ、少々下げ候節買入可く思う内に、毎日引上げ落引き出で、二三日以前の商内も、最早落ちになる様になる故、後れたれども半落ち位は取るべしと思ひ、上詰め候米を買重ぬることなり。甚だ宜しからず、慎むべき也。此所買入、利を取る事なし。仮令百両買入ても、初の安買二百両の利分、此為めに消へ利分なく、却って不足出る也。此処にて買入るる時は、又々少々引下げ候処にて、買い重ぬる心に成るなり。又上方相場種々申来るとも、其騒々敷処にて決して買はざる者なり。心得べし。是燈火消えんとして、光増す心なり。是非共、明日利分と見定むると雖も、買はざる者なり。此処米も強く人気も揃ひ強く、強気の人一倍募る処なり。此処にて行付天井を見ること肝要なり、考ふべし。

 

2.現代訳

十一月限で天井近くで買った米がある時、何らかの事情で商いもそう増えずに急騰する事がある。
二、三百両ほど買っている人も、千両、二千両買っている人でももっと買っておけば良かったと後悔し、残念に思って少し下がったらまた買おうと思っている内に、毎日上がり続けて天井打ちになって、ひとフシ下げてしまう。そういう時、少しでも取ろうと上がり切ったところで買い重ねるのは甚だ良く無い事で、慎むべきである。

こう言った所で買入れても利益を得る事は無い。たとえ、百両の買い入れでも初めの安値買いの二百両について乗っている利益も、この為に消えてしまい、却って不足分が出るものである。
ここで買ってしまうと、またそれより少し下げた所でも買い重ねる気になるものである。或は、上方相場の方でいろいろ好材料をはやし立てていても、買い人気で騒然となっている所では決して買ってはならない。心得ておくが良い。

ここでは、太陽にまでも登りつめ、ここからどれだけ上がるかもしれない様に見える。これは、灯火が消える寸前に、光が一瞬強まるのと同じである。必ず明日にも利が乗ると思い決めていても買ってはならないものである。

ここでは相場の動きも強く、人気も揃って強く、強気の人ばかり集まるところである。ここが天井と判断するのが肝要である。考えるがよい。

 

3.私の解釈

この節では、「天井付近の見様、心持ち」 について説かれています。
 

当節の内容で目を引く事として、「商内も不出急上になることあり」、「此処米も強く人気も揃ひ強く、強気の人一倍募る処なり」 でしょうか。出来高も大して増えずに急上げになる時、相場参加者が皆強気となり、相場も強く人気も片寄る時、即ち、新規の買いが増えずに上げ続けると、新たな買い方が居なくなり、後は下げるだけである事は自明の理であると思います。

 

この状態を、「燈火消えんとして、光増す心なり。」と例えており、当たり前の事と言えばそれまでですが、相場が強いと、どうしても相場を追いかけてしまいがちになりますので、気を付けたい所です。

 

また、天井付近で買ったものは、少し下がれば難平をしてしまう気になるものであり、これが傷口を広げる要因となる事も良くある事と思います。

 

そう考えますと、相場の水準、風、人気を考え、行付天井を見定める事、これが重要であり、天井の見様を説かれた以下4節の内、第10節にヒントが説かれていると思いますので、ご参考として頂けたら良いかと思います。 

 

 ・第9節  不作年駆引きの事
 ・第10節 相場引上げ大騒ぎ考の事
 ・第11節 行付天井直段の事
 ・第21節 上げ相場見様の事