本日は、現代訳宗久翁秘録 第137節「買米利運取留心得の事」をご紹介致します。
1.原文
目次
買米利運になり候に付、二三俵方も取留可申と、売返す事あるなり。是は商の道知らざる故なり、甚だ不宜なり。売返し候とて、少しも安堵ならざる者なり。新米の底は、景気附時は商不出、急に引上る者故、売買連れ落ちになり、手取り無之、其上、十一月迄数月の間故、甚だ苦労多し、其上急に引上る時は其返し又又下落の心遣ひ出るなり。売買手の内にある時は、昼夜無油断右図を以て駆引致し、十一月晦日迄毎日油断なき様可心掛事也。
2.現代訳
買米に利が乗って来ているからと、少しばかり売りでも取ってやろうと売り埋め(買値より高値で)してしまう事がある。これは相場の戦略というものを知らないからやってしまうことである。売り埋めは少しも安心出来ないものである。新米の底値から起上って来た相場では、さほどの商いを伴わずに急騰するので、うまく立ち回って売り、買い相方で取ろう思っても、出来ずに、結局利が出ない。その上、十一月の決済までの数か月は非常に神経を使う。さらに急騰した時の売り返し分の下落の心配をしなければならない。
売り買い両建てで相場に臨む時は、常に気を引き締めて、落引きの図をもって駆引きをし、十一月晦日の決済まで毎日、油断なく動きを見るが良い。
3.私の解釈
この節では、売り買い両建ての難しさについて説かれています。売り買い両建てとしては、次の2通りがあると思います。
①建玉に含み益が出た時の反対売買
②建玉が含み損となった時の反対売買
この節では、上述①の状況を説かれておりますが、それでも両建ては難しく決済月までは油断出来ないと説かれています。そして見逃せないのが、買い持ちの両建ては説かれていますが、売り持ちの両建ては一切触れられていない事です。
私の考えも同様で、①には繋ぎの売買として意味があると考えますが、②は損失金額が確定するだけで、損切りするよりタチが悪いと思います。損切りをすれば全てがリセットとなり、思い入れを排除してニュートラルな目線で相場を眺める事が出来ますが、損を抱えた両建ては、それを外す事が難しく、ニュートラルな目線で眺める事も難しいからです。
そう考えますと、両建ての手法としては、短期の波動の方向に建玉し、相当程度含み益が出た時、その反対方向へ押しそうな場合のみ、両建ての意味があるのでは無いでしょうか。其の含み益の大きさは、自分が見ている波の平均値幅が教えてくれます。やはり、チャートの分析が重要であると思います。